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藁文の家 ~お施主様の想いが伝わる家づくり~

始まりは1通のFAXから

2004年秋、ある1通のFAXが届いた。

「木造 平屋 トタン張り 12帖 小屋を事務所にしたい」

送信者は 自宅を開放してデイサービスなどの福祉事業を経営されている方。

仕事の為に自宅の和室を開放して スタッフの事務室として使用しているが、

毎日ここに来てくれる利用者さんに 書道・お花・お茶など・・・

「和室を和室らしく使って戴きたい・・・」

という想いから新たな事務室が必要となり このプロジェクトが始まった。

現場は愛知県名古屋市。

これから始まるいろいろな出来事は この1通のFAXから始まった。

 

会話の中から気づくこと

それからしばらく 打合せのために現地へ向かう日が続いた。

お施主様と打合せを進めていく中で 世間話の時間も増えてきた。

福祉のお仕事をどういう気持ちで始めたのか? 何故 自宅を開放したデイサービスに拘るのか?

そんな会話の中から少しずつお施主様の「人生哲学」のようなものを感じ取り始めた。

家作りに関することから始まり 環境に関すること 人とのかかわり合い 生きている意味・・・

そして 今回建設するストローベイルハウスがお施主様にとって どういう意味のものなのか?

その答えは この建物の完成と共に見えてくることになる。

工事日程も決まり、いよいよ解体作業が始まった。

 

構造体の差し替え

アルミサッシ スチールシャッター 外壁のトタン板等 全てを取り外し スケルトン状態になった物置小屋。

 改修工事というのは 始めてみないと分からない部分が多いもの。

 一部 シロアリが入った柱を見つけたので 柱の差し替えを行うことにした。

 さらに 断面欠損が大きな柱が2本・・・これも差し替え。

 土間の一部に埋め込まれた浴槽を発見。

この中に籾殻が入っていて、芋や玉ねぎなどの野菜を保存する「ムロ」として使っているようです。

構造的に不足している筋交いを追加して構造の補強も行った。

 ストローベイルの壁を支える基礎工事を始めると 改めてその壁の厚さを感じる。

 

古くから伝わるもの

「藁文の家」で使用する木材には 柿渋とべんがらをオリジナルでブレンドした塗料を使用。

岐阜県の大垣で古くから柿渋を作っている生産者から直接購入し その中にべんがらを混ぜます。

棟梁が材木から削り出した部材ひとつひとつに柿渋を丁寧に刷毛で塗り ウエスで拭き上げて乾燥させる

塗ってすぐには分かりませんが 紫外線に当てることで 少しずつ木材の表面に褐色の強力な保護層を形成します。

 

古くから伝わり 今に残っている知恵や技術は優れたものが多くて驚かされます。

生活にまつわる様々な知恵や技術 気候風土に逆らわない素直なしつらえ。 

もの作りの職人たちが本質を極限まで追求し続けて生み出す材料の数々

長い年月を経て受け継がれてきた職人の技術

ストローベイルハウスはそういった技術と共に成長させたいと思います。

ベイル工事は週末にワークショップで行う予定なので

棟梁は休日返上で現場を進めてくれています。

 

棟梁との話から見えてきたもの

棟梁の車で 現場で必要な丸竹を探しに行った時の話・・・

「大工」として誇れる技術を必要としない家作りが増えて

求められる仕事の「質」が変わっていくのを感じていると言う。

「住み手の顔が見えない家作りというものは 職人として仕事に気合が入らない訳でもないが・・・」

こういった話を棟梁の口から聞いたのは初めて。

ものをつくる人間にとって 何よりもうれしいのは 使う人の喜ぶ顔を見る時。

「ありがとう」

この一言を聞きたくて 苦労を買ってでもする種類の人間

とにかく喜ぶ顔が見たい。

喜んでもらうために出来る限りの事はしたい。

そのために技術にも知識にも磨きをかける努力を惜しまない。

「職人とは そういうものだと思っている」

その力強い言葉に 身震した事を今でも忘れない。

ベイル搬入準備完了

新設した基礎に土台を伏せて板を張り ベイル壁のベースを作る

 壁の下面は通気層となり ベイルが吸い込んだ湿気が放出される設計となっている。

 積上げたベイルの耐震性やメンテナンス等を考慮して 固定方法も独自の方法を研究している。

 日本におけるストローベイルハウスの設計方法についてはまだ研究段階であるが

 StrawBale-Projectが作る全ての建物は その時点で最善の方法を検討・採用して進化させていく。

 現場はストローベイルが積上げられるのを待っている。

 予め作っておいたストローベイルをトラックに積み込んで いざ現場へ!

 

夢のような時間

~ストローベイルの積上げ1日目~

2006年4月15日 16日の一泊二日で行う最初のワークショップ。

ワークショップ参加者の現場宿として 土曜~日曜にお施主様の自宅の「離れ」をお借りしました。

愛知県・長野県・千葉県・三重県・京都府・滋賀県・東京都・・・各地から参加者が集合‼

それぞれの自己紹介や作業内容の説明を行い 食事班と作業班に分かれて作業を開始。

出会ったばかりの 「ストローベイルハウス」というキーワードだけで繋がる面々が協力して作業を行い

初日で8割ほどの作業を終える。  1700に作業を終了し 全員で現場近くの銭湯で汗を流す。

現場宿へ戻り 夕食がひと段落する頃には緊張が解け ゆったりとした時間が流れていた。

今回参加したきっかけや 家作りのこと 環境のこと 人生のこと・・・それぞれの話で夜を過ごす。

 

~2日目~

昨日の緊張感とは違い 和やかな雰囲気で作業は順調に進み、作業の終わりが見えてくる

予定作業が終了すると 達成感に満ちた現場に流れる不思議な感覚に気付く。

「ずっと昔から知っているの友人と過ごしている様な感覚・・・」

ストローベイルハウス建設の現場で必ず感じるこの感覚がたまらないのだ。 クセになる・・・

「またね!」と言って 参加者はそれぞれ帰路に就く。

素敵な仲間と出会い 共に汗を流し いっぱい笑った「夢のような時間」は次回のワークショップに繋がる。

 

厚さ50cmのストローベイル壁

~土の下地塗りWS~

ベイルが積み終わり 現場は土塗り作業へと移る。

日本の家作りには欠かせなかった「土」だが 今となっては土を使う家はほとんど見なくなった。

ストローベイルハウスでは土を大量に使用します。

ベイルの外気側に土を厚く塗り重ねれば強い壁となり さらに土蔵のように耐火性が高まる。

ベイルの室内側を土で仕上れば 蓄熱性と調湿性を持った壁になる。 

出来上がる土壁の厚は約50cm

適度な通気を確保しつつ 壁表面で熱を蓄え 壁内部で断熱

つまり 高通気・高蓄熱・高断熱・高調湿!

土塗作業でも多くの参加者の方々と たっぷり汗を流しました!

真実の窓

外側では参加者が土塗り作業、内側では棟梁が造作工事が進めている。

ストローベイルハウスには「真実の窓」というものが設けられることが多い。

ストローベイルに土を塗ってしまうと 本当にストローベイルが使われているのかどうか分からなくなる・・・

そこで 藁が見えるように壁の一部に「真実の窓」を取り付ける様になったと聞いている。

将来 役目を終えたこの家も取り壊される時がいつか必ず来る。

その時は大地を汚すことなく 土に還したい・・・という想いから 今回のプロジェクトでは「土に還るもの」 を選んで使用している。

そんな材料の中でも特に象徴的な材料である「土」

今回使用する「土」を選ぶ時 タイミングよく採掘現場を見ることが出来た。

場所は 「瓦」の生産で有名な愛知県の三河地域

良質な土は田圃の深い部分から掘り出されている。

その様子を見て感じたことがある・・・

今回 こうして安全で良質な土が使えるのは これまでの長い年月の間

先人たちが田圃として安全な食の為に この大地を汚すことなく守ってきてくれていたからだ。 

ならば 僕たちはこの大地を汚すことなく将来へと受け継いでいかなければならないのだ!

そんなことを気づかせてくれたこの採掘場を離れようとした時 足元に粘土の塊がひとつ転がっていた・・・

それは大地の奥深く 何百年以上も昔に堆積した木や葉が土に変わろうとしている まさに境目の部分だった

何故かこの塊との出会いに特別な意味を感じて 現場へ持って帰ることにした

平成18年6月15日 棟梁が真実の窓の枠を取付ける日 

「この家が土に還るその日まで見守ってください」と願いを込めて真実の窓にその塊を納めた。

 

仕上げ塗りWS 1日目

ベイル壁の外壁は 下地塗り・中塗り・大直しの工程を終え いよいよ仕上塗りに。
実は 外壁の仕上に関しては この工事が始まる時から悩んでいた。
お施主様から依頼を受けた時に イメージは伝えられていたが なかなか決まらず その日を迎えてしまった。
左官職人さんに相談したり 棟梁に相談したり 自分でいろいろと調べたり・・・
そして いくつかの条件が見えてきた

強い壁を作ること

多くの方の参加が感じられる仕上げ

誰でも出来る単純な方法

土だけで仕上る(石灰やその他の混ぜ物をしない)

 ワークショップ前日になりようやく決定し 必要な道具を急遽 棟梁に作ってもらうことになる

作業工程は次の通り

1日目:乾燥した土壁に土を塗り重ね ひび割れ防止の藁を密に貼り付けて、その藁が見えなくなるまでさらに土を塗り重ねる。

2日目:1日目に塗った土の水分が適度に乾燥したタイミングで土壁の表面を叩き締めて仕上げる。

 つまり 仕上塗りは今回行う一泊二日のワークショップで終わらせることになる。

 

 この作業を行う頃には 参加者のほとんどは顔見知りになってきている。

徐々にいつもの参加者が集まり 作業を開始する。

最終工程ということもあって参加者にも気合が感じられ 気がつけば黙々と作業を進め 1日目の工程は予定通り終わった。

実はこの日は夏至。

2000から「キャンドルナイト」というイベントをワークショップ参加者で行うことになっていた

棟梁からはビールの差し入を頂き 参加者はそれぞれ自慢の「おかず一品」を持ち寄って参加しているので 贅沢な夕食を楽しむことが出来た。

そしてもうすぐ20:00

部屋中の電気を消し 蝋燭を灯して「キャンドルナイト」が始まった・・・

 

キャンドルナイト

仕上塗りワークショップ初日の夜の忘れられない出来事

現場の夜はキャンドルナイトの会場となった
20:00~22:00 現場では電気を消して ろうそくのあかりを灯し
みんなで「電気を使うこと」についてそれぞれ話し合った

「環境」について話し合った
「原子力」について話し合った
「便利」について話し合った
「美味しい食事」について話し合った
「生き方」について話し合った
「仕事」について話し合った
「恋人」について話し合った
「家族」について話し合った
とにかく笑って 食べて 飲んで 語って 議論して 考えて・・・

2時間の予定が4時間以上続いた
あたたかく 平和な時間はずーっと続いた
電気を必要としない 贅沢で素敵な時間を2006年6月17日 夏至

仲間と一緒に過ごした・・・

 

仕上げ塗りWS 2日目

いよいよ外壁 最終仕上げの日

今日から参加するメンバーが現場に到着する頃に 宿泊組も支度を済ませて現場へ出てゆく。

昨夜 キャンドルナイトで夜更かししてしまった仲間もいましたが・・・

早速 仕上工事を始める

棟梁に作ってもらった道具を参加者に渡して 昨日塗った土を徐々に叩き始めてもらう

水分が減ってふんわりとしていた土の表面が硬く締められていく「トントン・・・」という音が現場に響き渡る

ただ ひたすら叩いていく作業が続く中、素手でたたき始めた参加者がいた

でも その土壁はとてもいい表情をしている・・・

「これでいこう!」と決めた瞬間だった

ある程度を道具で叩き締めたら 最後の仕上げは手で叩いてください・・・と全員に伝えると

参加者はげんこつでドンドンドン・・・と壁を強くたたき始めた

ゴツゴツした手 柔らかい手

大きな手 小さな手

強く叩く人 やさしく叩く人

リズム良く叩く人 気ままに叩く人

まっすぐに叩く人 ランダムに叩く人

同じ人が叩いても 全く同じ模様は出来ない

参加者それぞれのリズムで叩くことで 壁が次第に南部鉄器のような趣のある表情へ変化していく

仕上げ作業が終わり 壁の美しさと達成感で 現場全体が少々興奮気味だったことを 今でもはっきり覚えている

作業が無事終わり 参加者とお茶を飲みながら解散まで残された少しの時間を惜しむように過ごす。

建物が完成してゆく嬉しさと 現場が終わり 仲間が遠くへ帰って行ってしまう別れの寂しさが僕を襲う

この感情は いつものことだけれど・・・やっぱりね・・・

壁の乾燥が楽しみです 

 

内装工事

次の工程は内部の壁に和紙を貼り付ける作業です。

この作業はこれまで参加してくださった方の中から 名古屋近辺に在住の方に声をかけて行いました

和紙は お施主様の友人の娘さんが大学時代に漉いた高知和紙を提供してくださるとのことで

その和紙を貼って仕上ることになりました。

建具の取り付けも同時に行われ いよいよ完成が見えてきた。

 

完成

仕上塗りを終えてから1週間後 外壁は乾き始めていた

壁に残るいろいろな形をした手の跡を見ると もう一度 参加者に会いたくなってしまいました・・・

内装工事・高速LAN工事も終わり、事務所として使える準備は出来た。

依頼から完成までの期間、お施主様からいろんな話を聞かせていただいた。

ここのデイサービスは自宅を開放した場所で利用者さんを受け入れる

「施設」ではなく「家」

これまで一生懸命に生きてきた方を尊敬・感謝して、プライドを尊重することからこのスタイルに拘ったそうです。

 

一つ 忘れられない言葉がある。

「子供は神様からの預かりもの」

「授かる」ではなく「預かる」

預かった子供は 世の中に出て人の為になるように育て 社会へ帰すことで神様へ恩返しをする。

親としてその役割をさせてくれることに感謝する。

その延長線上に「デイサービス」というお仕事をされているのだと感じた。

そして そのように育ててくれた両親と神様に感謝し さらなる自身の努力を重ねようと思った。